剣豪のごとく
スノーボードハーフパイプで平野歩夢選手が日本2つ目の金メダルを獲得した。
決勝2本目の演技は、先に行ったオーストラリア選手の92.50点を上回ったと
思ったが、採点は91.75点でわずかに及ばなかった。
素人目ではあるがどう見ても平野選手の方が技の難度と高さは上回っていた
ように見えたが・・本人もそう思っていたようで、その心の中の疑念を
次の演技の原動力に替え、全身全霊同じ技と構成で最終演技を行った。
その結果は、前演技以上に高さが増し、高難度の技の正確さで96.00をたたき出し
力ずくで金メダルを獲得した。
このハーフパイプ競技というのは技・難度・高さ・着地・構成などを加点し
総合点で競うのだが、競技者は個々の技を着地まで無難にまとめようとする
ことはしない。
競技の場では失敗を恐れず自分のできる最高の技を披露し、最終的に点数が
高かったものが優勝する、優勝するのでも自分の納得する演技で終えることが
競技者の中で暗黙のルールがあるようにも伺える。
平野歩夢選手の逆転をかけた最終演技は冷静沈着で緊張している様子もない、
何か失敗という邪念を捨て、これから果たせることを見定めていたように見えた。
それは敵は自分自身の心の中にあり、大技を挑み続け相手がその上がに行けば
さらにその上を行く、それに挑むことに今までの努力を持ってすれば失敗は無い
との思いであろう。
そして感心するのは喜びも冷静にかみしめる姿、インタビューにも気持ちの
高ぶりもなくただ淡々と受け答えるところである。
まさに達観したたたずまい つまらないことは考えず常に高潔さを求め
行き着く姿を見定めた武士道で鍛えあげられた剣豪のようである。
岡田 純